「将来使わないであろう知識を覚えても仕方ない」「わからないことはAIが教えてくれる」という意見が、少しずつ広がりを見せているようです。以前なら、この考え方に対して「学ぶことには意味がある」と多くの人が一斉に否定していたかもしれません。しかし、AIの発展により、一部の人々がこの意見に同意し始めているのも事実です。そこで、今回は「将来使わない知識を学ぶ意味」について、AI時代における学びの意義を改めて考えてみましょう。

1. 知識を覚えることは無駄なのか？

1. AIが答えを教えてくれる時代だからこそ考える「学び」の意義

　確かに、AIは私たちの生活を便利にしてくれる道具です。何かわからないことがあれば、質問をすればすぐに答えてくれます。ですが、すべてをAIに頼ってしまうと、私たちは自分で考える力を失ってしまう危険があります。学びというのは単なる情報を覚えることではなく、思考力や理解力を養うこと。AIが便利だからといって、すべての知識をAIに頼りきってしまうことは、長い目で見ると自分の可能性を狭めることにもつながります。

• 　・例: 数学の公式や理論を覚えることは、将来直接使わないかもしれませんが、それを学ぶ過程で論理的な考え方や問題解決能力が鍛えられます。こうした力は、社会に出てからもさまざまな場面で役立つものです。

2. 学びが育てる「思考力」と「応用力」

　知識を覚えることがすべてではありませんが、知識を持っていることが思考力や応用力を育てることにつながります。学びの過程で得た知識や経験は、AIが瞬時に答えをくれる「結果」とは異なり、自分自身の中での「成長」となり、さまざまな状況で応用できる力を与えてくれます。

• 　・改善策: 将来使うかどうかにとらわれすぎず、知識を「脳のトレーニング」として捉え、思考力を育てるきっかけにすることが大切です。

2. AIに頼りきりだと、逆に危険？

1. すぐに答えを求める姿勢が思考停止を招く

　何でもAIに頼ってしまうと、自分で考えることを放棄してしまう可能性があります。わからないことをすぐにAIに聞いてしまうと、自分の頭で考える時間や、問題を解決するためのプロセスが失われてしまいます。この「思考停止」が進むと、問題解決能力や論理的な判断力が低下し、将来的に自分で答えを導き出すことが難しくなってしまうかもしれません。

• 　・例: 例えば、歴史の出来事や人物を覚えるのが面倒だからといって、AIに答えを求め続けると、歴史全体の流れや背景を理解する機会を失います。これにより、自分の考えや価値観が形成されにくくなるでしょう。

2. 「知識」と「理解」は異なる

　AIから得られるのは「知識」だけであり、それを自分の経験や理解と結びつけることができなければ、知識はただの情報にすぎません。例えば、ある言葉の意味をAIで調べたとしても、その言葉を使った背景やニュアンスを理解することとは別問題です。自分で調べ、自分で考え、理解することで初めて「知識」は「知恵」として活用できるものになります。

• 　・改善策: 「AIで知識は得られても、知恵を育てることはできない」と意識し、自分の理解力を高めるためにも、学びの過程を大切にしましょう。

3. 将来使うかどうかだけで知識の価値を決めない

1. 知識は「未来の選択肢」を広げる

　「将来使わない知識だから覚えても意味がない」と考えると、自分で自分の未来の選択肢を狭めることになりかねません。学びを重ねることで、興味や関心が広がり、思いがけない分野に道が開けることもあります。勉強した内容がそのまま将来に役立つこともあれば、自分に新たな視点や可能性をもたらすこともあります。

• 　・例: 学校で学ぶ音楽や美術は、直接的に仕事に役立たないかもしれません。しかし、芸術的な感性や創造力は、人生に豊かさをもたらすだけでなく、他の分野での発想力を高める力にもなります。

2. 学びの意義は、使うかどうかではない

　「将来使うかどうか」に囚われてしまうと、知識の本当の価値を見失ってしまいます。学びは自分を成長させ、自分の視野を広げるためのもの。その結果として、将来のどこかで活用できることもあれば、違う形で役立つこともあります。自分の知識や考えを深める過程が、学びの本当の意味です。

• 　・改善策: 「学びはすぐに役立たなくても、未来への投資」だと考え、自分の可能性を広げるために前向きに取り組んでいきましょう。

まとめ

「将来使わない知識を覚える意味があるのか？」と疑問に感じる生徒もいるかもしれません。しかし、学びの本当の意味は、単に知識を蓄えることではなく、思考力や理解力、そして自分の成長を促すことにあります。AIが進化して、答えを教えてくれる時代だからこそ、自分の頭で考え、自分の理解を深める力を大切にすることが必要です。

将来使うかどうかにこだわらず、学びを通して自分を成長させ、視野を広げることが、未来の可能性を広げる第一歩です。今の学びがどのような形で役立つかはわかりませんが、必ずどこかで意味を持つはず。成長のために、今できる学びを大切にしていきましょう。