塾長ブログ

2023/07/19
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分かってないのに分かったと言ってしまう生徒の心境

教室の中で、先生が「これが分かりますか?」と質問するとき、多くの生徒が「はい、分かります」と答えます。しかし、実際には全てが理解できていないことも少なくありません。では、何故生徒たちは分かっていないのに「分かった」と言ってしまうのでしょうか?

まず最初に理解すべきは、この行動が罪深い嘘ではなく、彼らが直面している困難や不安から生まれる結果であるということです。生徒たちは様々な社会的な圧力にさらされています。クラスメートからの評価、期待に応えたいという親からのプレッシャー、そして何より自分自身のパフォーマンスに対する厳しい自己評価。これら全てが彼らを「分かった」と言わせる一因となっています。

次に、生徒たちはよく、「自分だけが理解できていない」と感じるかもしれません。教室の中で自分だけが質問をすることで、他の生徒に遅れをとっていると見られるのではないかという恐れがあります。また、質問すること自体が自分の理解度を公に示すことになり、それが自己の不安を増幅させるかもしれません。

それに加えて、生徒たちはしばしば、自分が理解できない原因を自分自身の能力の不足と結びつけてしまいます。つまり、「分からない=自分は無能だ」という考え方を持つことがあります。その結果、自分が理解できないことを認めるのは、自分自身への否定となり、自尊心を傷つける恐れがあるため、それを避ける傾向にあるのです。

では、この問題をどう解決すれば良いのでしょうか?まず、教師や保護者として大切なのは、学ぶこと自体が困難な過程であり、理解できないことは自然なことだと認識することです。それを生徒に伝え、理解できないことを恐れず、逆に好奇心と学びの一環として受け入れる環境を提供することが重要です。

また、生徒には自分が分からないことを率直に話し、それを解決するための手段を探す勇気を持つことを奨励しましょう。それは質問をすることであったり、追加のリソースを探すことであったり、教師や友人に助けを求めることであったりします。

「分かった」と言うことは、一見、嘘をつくように見えるかもしれませんが、その背後には深い不安と困難が存在しています。私たち大人の役割は、生徒がそれらの不安を克服し、自信を持って学ぶことができる安全な学習環境を作り出すことです。そうすれば、「分かっていないのに分かった」と言う心境から、「分からない、だけど学ぶ」という心境へと変わるでしょう。

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