宇宙ステーションではどうやって酸素を作っているのか?
宇宙空間には空気がないため、宇宙飛行士が生きていくためには酸素をどう確保するかが非常に重要です。
では、地球から遠く離れた国際宇宙ステーション(ISS)では、どのようにして酸素を作っているのでしょうか?
① そもそも宇宙ステーションの空気はどうなっているのか?
宇宙ステーション内では、地球上と同じように呼吸ができる環境が整えられています。
つまり、酸素と窒素がバランスよく含まれた空気が循環しているのです。
しかし、宇宙空間では自然に酸素が補充されることはないため、何らかの方法で酸素を供給し続ける必要があります。
② 宇宙ステーションでの酸素の供給方法
宇宙ステーションで酸素を確保する方法には、主に以下の3つがあります。
① 水を電気分解して酸素を作る(エレクトロリシス)
ISSの酸素供給の主な方法は、水の電気分解です。
これは、水(H₂O)に電流を流して酸素(O₂)と水素(H₂)に分解する方法です。
電気分解の仕組み
H₂O(水) → O₂(酸素)+ H₂(水素)
この酸素を宇宙飛行士が呼吸に使い、不要な水素は宇宙空間に排出します。
水は地球から補給されたり、宇宙飛行士の呼吸や汗、尿をろ過して再利用することで確保しています。
➡ この方法がISSの酸素供給の約50~60%を支えています。
② 地球から酸素ボンベを持っていく
ISSでは定期的に補給船(ソユーズやドラゴンなど)が訪れ、酸素ボンベ(高圧酸素タンク)を補給しています。
ただし、これだけでは長期間のミッションには対応できないため、電気分解と併用されています。
地球から補給できる量には限りがあるため、あくまで予備の手段として使われています。
③ 化学反応を利用して酸素を生成する
酸素が不足した場合に備えて、化学反応で酸素を作り出す装置も搭載されています。
例えば、「酸素キャンドル(Solid Fuel Oxygen Generator, SFOG)」という装置があります。
酸素キャンドルとは?
酸素キャンドルは、リチウム過塩素酸塩(LiClO₄)という化合物を加熱することで酸素を発生させる装置です。
化学反応の仕組み
LiClO₄(リチウム過塩素酸塩) → LiCl(塩化リチウム)+ O₂(酸素)
この方法は、緊急時や電気分解装置が故障した際のバックアップとして使用されます。
③ 酸素がなくならないための工夫
宇宙ステーションでは、酸素を効率よく循環させるための仕組みも整っています。
(1) 二酸化炭素を取り除く
宇宙飛行士が酸素を吸って二酸化炭素(CO₂)を吐き出すため、そのままだと酸素がどんどん減ってしまいます。
そこで、CO₂を除去して酸素を回収する装置がISSには搭載されています。
例えば、サバティエ反応器を使うと、二酸化炭素(CO₂)と水素(H₂)を反応させて水とメタンを生成できます。
その水を再利用して電気分解することで、また酸素が作られます。
サバティエ反応の仕組み
CO₂(炭酸ガス)+ 4H₂(水素) → CH₄(メタン)+ 2H₂O(水)
こうした循環システムのおかげで、宇宙飛行士は限られた酸素を最大限活用できるのです。
④ 未来の宇宙酸素供給技術
現在のISSでは、水の電気分解をメインに酸素を供給していますが、
今後の長期間の宇宙ミッションでは、新しい技術が求められます。
① 植物を使った酸素供給(閉鎖型生命維持システム)
将来的には、宇宙ステーション内で植物を育てて光合成による酸素生成を行う計画があります。
植物が二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する仕組みを利用するのです。
② 月や火星の資源を活用する(ISRU技術)
NASAやESAは、月や火星の土壌に含まれる酸化物から酸素を取り出す技術(ISRU)を研究しています。
これが実現すれば、現地で酸素を作れるため、地球からの補給が不要になります。
⑤ まとめ
宇宙ステーションの酸素供給は主に「水の電気分解」「酸素ボンベの補給」「化学反応」の3つの方法で行われている。
・ 二酸化炭素を取り除き、酸素を効率よく循環させるシステムも重要。
・ 将来的には、植物の光合成や月・火星の資源を活用した酸素供給システムが開発される可能性がある。
宇宙では空気を「あるのが当たり前」ではなく、「作り出して循環させる」必要があります。
こうした技術は、宇宙探査の未来だけでなく、地球環境技術にも応用できるかもしれません。
もし月や火星に人類が住む時代が来たら、こうした酸素供給システムが欠かせないものになっていくでしょう!