宇宙の温度は「気温」とは言わない?— 気体がない空間の温度とは?
「今日の気温は〇〇度です」と、私たちは普段何気なく「気温」という言葉を使っています。
しかし、もし宇宙空間の温度について話すとき、「気温」と言うのは適切なのでしょうか?
宇宙はほぼ真空であり、私たちが地球上で感じる「空気」がほとんど存在しません。
では、気体がない空間の温度とは一体何なのでしょうか? そして、宇宙の温度はどのように決まるのでしょうか?
今回は、そんな「宇宙の温度」について考えてみましょう!
① 「気温」とは何か?
そもそも「気温」とは何を指しているのでしょうか?
私たちが普段使う「気温」とは、空気(気体)の温度のことを指しています。
地球上では、空気中の分子が運動することで温度が生まれるため、空気の温度を「気温」として測定できます。
つまり、「気温」という概念は、大気(気体)があることを前提としたものなのです。
では、宇宙空間のように気体がほぼ存在しない環境では、温度はどのように測るのでしょうか?
② 宇宙空間の温度はどう決まるのか?
宇宙には空気がほぼないため、気温という概念は適用できません。
では、宇宙の温度はどうやって決まるのでしょうか?
★宇宙の温度を決めるもの
宇宙空間では、温度を決める要素は主に 「放射(輻射)」 です。
地球上では、温度の変化は主に 「伝導」(物質の接触による熱の移動)や 「対流」(空気や液体の流れによる熱の移動)によって起こります。
しかし、宇宙空間にはほぼ気体がないため、伝導や対流は発生しません。
その代わりに、熱は 電磁波(赤外線や可視光線など)の放射 によってのみ移動します。
つまり、宇宙空間では熱の受け取り方や放出の仕方が、地球上とはまったく異なるのです。
③ 宇宙の温度は「場所」によって大きく変わる
宇宙空間の温度は 場所によって大きく異なります。
★太陽の近くでは超高温!
宇宙空間において、太陽光が直接当たる場所では、数百度〜1000℃以上にもなります。
これは、大気がないため熱が逃げず、太陽からの放射を直接受け続けるからです。
例えば、地球のすぐ外側(国際宇宙ステーションが飛んでいるあたり)でも、
- ・太陽光が当たっている部分 → 約120〜250℃
- ・太陽光が当たらない部分 → −150〜−250℃
と、極端な温度差が生じます。
★太陽から離れると極寒!
逆に、太陽の光が届かない宇宙の深い場所では、絶対零度に近い温度(約-270℃) まで冷え込みます。
これは、宇宙のあらゆる方向から放射される「宇宙背景放射(ビッグバンの名残)」の温度が約-270.4℃であるためです。
つまり、宇宙の温度は「どこにいるか」や「太陽の光を受けているか」によって大きく異なるのです。
④ 「気温」ではなく「物体の温度」で考える
宇宙では、気温という概念が存在しないため、「物体の温度」で考える必要があります。
例えば、宇宙服を着た宇宙飛行士が宇宙空間にいる場合、
- ・太陽が当たる部分 → 宇宙服が加熱され、数百℃近くになる可能性あり
- ・太陽が当たらない部分 → 宇宙服が冷却され、−200℃以下になることも
このように、宇宙では「物体が受ける放射の量」によって温度が決まります。
つまり、「宇宙の温度」と言っても、それは「空気の温度」ではなく、そこにある物体の温度を指しているのです。
⑤ まとめ
✅ 宇宙の温度は「気温」ではない!
- ・「気温」とは、気体(空気)の温度を示すもの。
- ・宇宙空間には気体がほぼ存在しないため、「気温」という概念は適用できない。
✅ 宇宙の温度は「放射(輻射)」によって決まる
- ・宇宙では、熱は「伝導」や「対流」ではなく、「放射(輻射)」によって移動する。
- ・そのため、太陽の光を浴びているかどうかで温度が大きく変わる。
✅ 宇宙の温度は場所によって大きく変わる
- ・太陽が当たる場所 → 超高温(数百℃以上)
- ・太陽の光が当たらない場所 → 極寒(約-270℃)
✅ 宇宙の温度は「物体の温度」として考える
- ・宇宙空間の温度を考えるときは、「その場の気体の温度」ではなく「そこにある物体の温度」を考える。
結論:「宇宙の温度」は「気温」ではなく「物体の温度」!
地球上では「気温」という概念がありますが、それは空気(気体)があるからこそ成り立つものです。
しかし、宇宙空間では気体がほぼ存在しないため、「気温」ではなく「物体の温度」として考えなければなりません。
つまり、宇宙空間では「気温が何度」というのではなく、
「その場所にある物体の温度がどう変化するか?」 という視点で見ることが重要なのです。
普段は意識することのない「温度」の概念ですが、宇宙ではまた違った形で捉える必要があるというのは、とても興味深いですね!